SERAPHIN

SERAPHIN Zip Up Ram Napa Leather Jacket

定価
¥198,000
定価
特価
¥198,000
Tax included
COLOR : BEIGE

SIZE 44:着丈66.5cm 肩幅46.5cm 身幅60cm 袖丈66cm

MATERIAL : LAMB LEATHER
SILK

19世紀の質実剛健なワークウェアや軍実物品としてのミリタリーウェアから、2000年代の洗練されたモダンアーカイブにいたるまで、衣服の歴史は常に時代の要請とデザイナーの思想によって形作られてきました。当店が目指すのは、単なるヴィンテージ古着の販売に留まらず、これら悠久の時をサバイブしてきた衣服の意匠を多角的な視点から紐解き、ゆくゆくは一冊の服飾史として結実するような資料的価値の高いコレクションを蓄積していくことです。その壮大なアーカイブの系譜において、20世紀後半のフランス・パリのなかで「レザーの最高峰ファクトリー」として不動の地位を築き、世界のトップメゾンが自らの最高級ラインの製造を文字通り全面委託してきた伝説の最高峰メーカーが存在します。それが、1975年にパリの歴史的な職人街であるサンマルタン運河沿いで創業された名門『SERAPHIN(セラファン)』です。今回ご紹介する衣服は、そのセラファンが自らの名を冠したシグネチャーレーベルにおいて、最も贅沢な素材とクチュール仕立ての技術を惜しみなく注ぎ込んで完成させた「ジップアップ・ラムナパレザー・ジャケット」です。触れた瞬間に世界が激変するほどの質感を持つ、吸い付くようにシルキーな最上級のラムナパレザーをベースに、サイドの切り替えスエード、riri社製高級ジップ、保持されたリブ、そして要所に配された最高級シルクにいたるまで、世界中のラグジュアリーの頂点を一つの衣服に結晶化させた、究極のマスターピースです。

本作のデザイン的なルーツを紐解くと、衣服の歴史におけるひとつの幸福な融合が見えてきます。この美しいスタンドカラーと裾・袖口のリブ仕様からなるジップアップブルゾンの原点となったのは、1930年代にイギリスで雨天のゴルフ用防寒着として開発された「ハリントンジャケット」、あるいは第一次世界大戦時にアメリカ陸軍航空隊が厳冬のコックピットを生き抜くために考案した「A-2フライトジャケット」という、スポーツとミリタリーという二つの質実剛健な機能美の記号です。本来、これらの原型は、雨風や埃をシャットアウトするために、硬質な高密度コットンや、馬革、牛革といった頑強で重厚な素材で仕立てられるのが鉄則でした。しかしセラファンは、その冷徹なまでの機能主義的パターンワークをあえてそのまま踏襲しながら、素材を極上のラムナパレザーへと180度転換させるという、鮮やかな「様式の逆転」を試みました。これにより、ミリタリーやスポーツが持つ男らしく武骨な戦闘的シルエットの骨格を残しながら、纏った瞬間にカーディガンのように優しく身体を包み込む、パリのエレガンスという全く新しい都市型ラグジュアリーの衣服へと昇華させることに成功したのです。

本作が産み落とされた2000年代初頭から2010年代前半という時代は、世界のハイファッションシーンにおいて「レザーウェアの定義」が根底から覆った、極めてダイナミックな激動の時代背景を持っています。1990年代後半から2000年代にかけて、ディオール・オムを率いたデザイナーや、グッチおよびイヴ・サンローランを席巻した天才たちによって、それまでストリートやバイカーの文脈に属していたレザージャケットが、極限まで洗練された「ハイメゾンのモード」へと鮮烈に引き上げられました。彼らの台頭により、世界中の富裕層やファッショニスタの間で、重くて硬い革ジャンを我慢して育てるのではなく、最初から身体のラインを美しく魅せる、軽やかでとろけるような最高級レザーを素肌の上に羽織るという新しい美学が完全に市民権を得たのです。

この時代、多くのファッションブランドがそうしたロックで構築的なロジックや、官能的なグラマラスさに強く影響され、極端なデザインやタイトフィッティングに傾倒していきました。しかし、エルメスのレザーをも手がけるセラファンという孤高のファクトリーのスタンスは、それらの刹那的な流行の過熱とは全く異なる、きわめて高潔な距離感を保っていました。セラファンは、特定のデザイナーの強烈な個性に影響を受けるのではなく、むしろ彼らトップデザイナーたちが頭の中で描く「理想のレザーウェア」という妄想を、圧倒的な技術力で現実の衣服へと具現化するプラットフォームとしての役割に徹していたのです。本作の、トレンドに左右されないタイムレスなスタンドカラーの造形や、絶妙な身幅のゆとり、あるいはハニーベージュというノーブルな色彩の選択には、デザインの過剰な主張を徹底的に引き算し、ファブリックのクオリティと仕立ての精度だけで世界を圧倒するという、パリの最高峰ファクトリーとしての絶対的な矜持と静かな自信が、静謐に、そして強固に息づいています。

意匠を細部まで観察すると、ただのミニマルなスポーツジャケットの枠組みを遥かに超えた、ファクトリーとしての狂気的なまでのクラフトマンシップと美学が随所に散りばめられています。フロントの佇まいは高潔なスポーツブルゾンタイプですが、その両脇下から裾にかけたサイドパネルを観察すると、同系色の美しく起毛した最上級のスエードへとファブリックが変則的に切り替えられていることに気付きます。この、ナパレザーの滑らかな光沢と、スエードの光を吸い込むマットな質感という、質感の逆転の発想によるアシンメトリーな素材のコントラストは、着用時に身体のラインをスマートに魅せる視覚的効果をもたらすと同時に、衣服全体にえも言われぬ立体感とモダンな色気を漂わせています。襟元、袖口、そして高いテンションが維持された裾部分に配されたニットリブは、最高品質のウールを高密度に編み立てたものであり、何年着用しても伸びきることのない圧倒的なキックバック性と、首元を優しく包み込む極上の肌触りを実現しています。

そして、本作の工芸品としての絶対的な格を証明しているのが、衣服の内部と細部のハードウェアに隠された贅沢極まりないマテリアル・エビデンスです。フロントのメインジッパー、および内ポケットのジッパーのスライダーには、スイスが世界に誇る最高峰の美術パーツメーカーである「riri(リリ)」社製のメタルジップが鎮座しています。しかも、メインジップのスライダーのトップには、贅沢にもブランドネームが立体的に型押しされた、ブランド特注の真鍮製リングパーツが配されており、ダークベージュのボディにおいて最高の視覚的アクセントとなっています。ririジップ特有の、カチッと噛み合う冷徹なまでの金属の重厚感と滑らかな滑りは、本作が一切の妥協なく作られた最高級衣服であることの動かぬ証拠です。

さらに衣服の内部へと視線を移した瞬間に、セラファンが辿り着いた贅沢な構造的イノベーションの真髄が露わになります。本作の背ウラにあたる身頃部分は、裏地を一切張らない贅沢な「一枚仕立て(アンライニング)」で構築されています。これは、原皮そのもののクオリティに絶対的な自信があるからこそ成せる業であり、最上級のラムナパレザーが持つモチッと吸い付くようなシルキーな質感と、驚くほどの軽さをダイレクトに身体で感じることができる至高の設計です。その一方で、衣服を着用する際の腕通しの滑らかさと、日常的な耐久性が最も要求される「袖裏」、および重要な小物を収める「ポケットの袋布(裏地)」の要所にだけ、贅沢の極みとも言える「100% SOIE / SILK(純シルク)」ファブリックがピンポイントで精密に張り巡らされています。袖を通した瞬間に、一枚仕立てのナパレザーの軽やかさと、部分使いされた最高級シルクの滑らかな滑り性が完璧にシンクロし、レザージャケット特有の重苦しさや突っ張り感は微塵もなく、まるで極上のシャツや上質なカーディガンを羽織っているかのような、ストレスフリーで至高の着心地を着用者にもたらします。内側に丁寧に縫い付けられた「MANUFACTURE SERAPHIN FRANCE」のブラウンのサテン織りネームタグと、それに連なるマテリアルタグの佇まい自体が、パリの職人たちの誇りを現代に静かに伝えています。

現代の日常着として本作を観察した際、その価値を決定的に高めているのが、この上品で洗練されたハニーベージュの色彩と、ダイナミックでありながらも無駄のない完璧なモダンカッティングのシルエットです。ヴィンテージのレザージャケットにありがちな、男臭すぎる黒や茶のカウハイドとは完全に一線を画した、上品で都会的なヨーロッパの気品を湛えたこの色彩は、現代のニュアンスカラーのコーディネートや、クリーンなスラックス、上質なニットの上からリラックスして羽織るだけで、一瞬にしてスタイリングの格をメゾンクオリティへと引き上げます。肩周りのパターニングも非常に立体的であり、アームホールに適度な運動量を遺しながらも、着用時には美しく身体に沿うエレガントなバルーンシルエットを構築することに成功しています。

当店がこのSERAPHINのレザージャケットを資料的価値の高いアイテムとして位置づける理由は、エルメスのレザーをも手がける最高峰ファクトリーの誇り高き職人技、ラムナパレザーとスエードの奇跡的な素材使い、一枚仕立ての身頃と部分シルク裏地という計算し尽くされた構造美、ririジップといった最高峰のマテリアル、そして「MADE IN FRANCE」というパリのアトリエの息吹が、完璧な保存状態とともに現代に保存されているからです。希少なヴィンテージを所有することの意義は、その衣服に宿る確かな価値の根拠と歴史の断片を、自らのワードローブの一部として引き継ぐことにあります。衣服をただ消費するのではない、その背景にある歴史やコンテキストを読み解き、クローゼットに迎え入れること。それは、一冊の壮大な服飾の本の、重要な1ページを所有することと同義です。時空超えて現代に洗練された姿を留めるこのフランス最高峰の至宝は、時代や流行がどのように移り変わろうとも、決して色褪せることのない universal な価値を、それを纏う者に与え続けてくれるでしょう。当店が良いと思うアイテムの集積として、この先も未来へ遺すべき美しい遺産の筆頭として、自信を持っておすすめいたします。