HERMES Lamb Leather Zip Up Blouson
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¥495,000 - 定価
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¥495,000
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COLOR : BEIGE
SIZE:48 着丈72cm 肩幅45cm 身幅56cm 袖丈65cm
MATERIAL :
表地 : Lambskin 100%
19世紀の質実剛健なワークウェアや軍実物品としてのミリタリーウェアから、2000年代の洗練されたモダンアーカイブにいたるまで、衣服の歴史は常に時代の要請とデザイナーの思想によって形作られてきました。当店が目指すのは、単なるヴィンテージ古着の販売に留まらず、これら悠久の時をサバイブしてきた衣服の意匠を多角的な視点から紐解き、ゆくゆくは一冊 of 服飾史として結実するような資料的価値の高いコレクションを蓄積していくことです。その壮大なアーカイブの系譜において、世界のラグジュアリーの頂点、いや、人類の服飾文化そのものの至高の到達点として君臨する絶対的な存在が『HERMÈS(エルメス)』です。今回ご紹介する衣服は、そのエルメスが自らの誇り高きクラフトマンシップのすべてを捧げて仕立てた、極上の「ラムレザー・ジップアップ・ブルゾン」です。エルメスというブランドが内包する崇高なフィロソフィー、1837年の創業以来途切れることなく受け継がれてきた馬具工房としてのアイデンティティ、そして世界の全レザーのなかから選び抜かれたわずか数パーセントの至高の原皮が描く圧倒的な機能美。それらすべての要素が、2000年代初頭のモダンモードの美学と奇跡的な融合を果たした、まさにクローゼットの終着駅に相応しい至高のマスターピースです。
エルメスというブランドを真に理解するためには、彼らが掲げる「職人技の尊厳」と「タイムレスな実用主義」という揺るぎないブランドシップを紐解く必要があります。多くのハイブランドが工場での大量生産やライセンスビジネスに傾倒していった20世紀後半から現代にいたるまで、エルメスは頑なに「一人の職人が最初から最後までひとつの製品を作り上げる」という、フランスの伝統的なアトリエシステムを守り続けてきました。彼らにとって衣服やバッグは、一過性の流行を消費するための道具ではなく、何十年もの時を共に過ごし、修繕を繰り返しながら次世代へと受け継いでいくべき「動く芸術品」なのです。なかでも、エルメスにおけるレザーアイテムの存在は完全に別格です。なぜなら、彼らの歴史は最高級の革を操る「馬具工房」から始まっているからです。馬の命を預かり、激しい摩擦や過酷な気候に耐えうる強靭さと、馬の肌を傷つけない究極の滑らかさを両立させる技術。この馬具作りのDNAこそが、エルメスのレザーウェアを世界のどのブランドよりも高潔な存在へと押し上げている根源の理由です。
本作を精査し、衣服に刻まれたディテールやタグの仕様を読み解いていくと、本作が一体何年代に作られたものであるのかという歴史の答えが鮮やかに浮かび上がってきます。品質表示タグのデザイン、フォント、そしてハードウェアの構造美から推証すると、本作の製造年代は「2000年代初頭から前半(2000s)」に仕立てられた、極めて貴重なマルジェラ期直後、あるいは初期ジャン=ポール・ゴルチエ期のモダンアーカイブであると強く推定されます。1990年代末から2000年代初頭にかけてエルメスのプレタポルテ(高級既製服)を率いたマルタン・マルジェラ、そしてそのバトンを引き継いだゴルチエの時代は、エルメスの長い歴史のなかでも、伝統的な職人技に「衣服としての機能性と都会的なミニマリズム」が最も美しく、そしてアバンギャルドに注入された黄金期でした。この時代に産み落とされた本作は、過度な装飾を徹底的に削ぎ落としながら、カッティングの魔術と素材の破壊力だけで見る者を平伏させる、圧倒的なデザイン強度を誇っています。
本作のデザイン的なルーツを紐解くと、1930年代のイギリスで雨天のスポーツウェアとして開発された「ハリントンジャケット」や、ミリタリーにおけるフライトブルゾンの骨格がベースになっていることが見えてきます。しかし、エルメスはその武骨な記号をあえて採用しながら、素材を極上のラムレザー(最高級羊革)へと180度転換させ、独自のサルトリアルな解釈で再構築しました。採用されているラムレザーは、エルメスが独占的な買い付け権を持つ世界最高峰のタンナーから供給された原皮のなかでも、傷やムラが一切ない奇跡的な部位だけを贅沢に使用した超一級品です。驚くべきは、そのモチッと吸い付くようなシルキーな柔らかさでありながら、触れた瞬間に芯のある強靭さを感じさせる質感です。これは、革の表面を削って美しく見せる安価な手法ではなく、原皮の自然な風合い(銀面)をそのまま生かしたフルグレインレザーであることの動かぬ証拠です。
意匠を細部まで観察すると、ただのミニマルなジップブルゾンの枠組みを遥かに超えた、エルメスのアトリエが注ぎ込んだ狂気的なまでのディテールワークが随所に散りばめられています。フロントのジッパーを開閉するスライダーには、エルメスのレザーウェアにのみ採用が許される特注のメタルジップが鎮座しています。その引き手(プルタブ)には、贅沢にもボディと同素材の最高級ラムレザーが職人の手作業によって極小のピッチで巻き付けられており、冷徹な金属の質感のなかにエルメスらしい温もりと上品な佇まいを演出しています。ジッパーのエレメントひとつにいたるまで、衣服を傷つけないように精密に研磨されており、滑らかな滑り性はまさに至高のハードウェアです。
さらに衣服の内部へと視線を移した瞬間に、エルメスが辿り着いた贅沢な構造的イノベーションの真髄が露わになります。本作の身頃(背ウラ)部分は、裏地を一切張らない贅沢な「一枚仕立て(アンライニング)」で構築されています。これは、裏地で革の粗を隠すことが一切許されないため、裏面まで均一に美しく仕上げられた完璧な原皮でなければ絶対に不可能な、ファクトリーとしての絶対的な自信の証明です。これにより、最高級ラムレザーの軽さと柔らかさをダイレクトに身体に馴染ませることができます。その一方で、衣服を着用する際の腕通しの滑らかさが最も要求される「袖裏」、および重要な小物を収める「ポケットの袋布」の要所にだけ、贅沢の極みとも言える最高級シルク(SOIE)ファブリックが精密に張り巡らされています。袖を通した瞬間に、一枚仕立てのラムレザーの軽やかさと、部分使いされた最高級シルクの滑らかな滑り性が完璧にシンクロし、レザージャケット特有の重苦しさは微塵もなく、まるで上質なカーディガンを羽織っているかのような、ストレスフリーで至高の着心地を着用者にもたらします。
現代の日常着として本作を観察した際、その価値を決定的に高めているのが、この上品で洗練された「ライトベージュ(生成り)」の色彩と、ダイナミックでありながらも無駄のない完璧なモダンカッティングのシルエットです。男臭すぎる黒の革ジャンとは完全に一線を画した、フランスのハイエンドな気品を湛えたこの色彩は、現代のニュアンスカラーのコーディネートや、クリーンなスラックス、上質なニットの上からリラックスして羽織るだけで、一瞬にしてスタイリングの格をメゾンクオリティへと引き上げます。肩周りのパターニングも非常に立体的であり、アームホールに適度な運動量を遺しながらも、着用時には美しく身体に沿うエレガントなバルーンシルエットを構築することに成功しています。
当店がこのHERMÈSのレザージャケットを資料的価値の高いアイテムとして位置づける理由は、馬具工房をルーツに持つエルメスの誇り高き職人技、ラムレザーの奇跡的なコンディション、一枚仕立ての身頃と部分シルク裏地という計算し尽くされた構造美、そして2000年代初頭というデザイン黄金期の息吹が、完璧な保存状態とともに現代に保存されているからです。希少なヴィンテージを所有することの意義は、その衣服に宿る確かな価値の根拠と歴史の断片を、自らのワードローブの一部として引き継ぐことにあります。衣服をただ消費するのではない、その背景にある歴史やコンテキストを読み解き、クローゼットに迎え入れること。それは、一冊の壮大な服飾の本の、重要な1ページを所有することと同義です。時空を超えて現代に洗練された姿を留めるこのフランス最高峰の至宝は、時代や流行がどのように移り変わろうとも、決して色褪せることのない universal な価値を、それを纏う者に与え続けてくれるでしょう。当店が良いと思うアイテムの集積として、この先も未来へ遺すべき美しい遺産の筆頭として、自信を持っておすすめいたします。


