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85AW STONE ISLAND RASO GOMMATO Coloured Cover

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COLOR : WHITE

SIZE M : 着丈69cm 肩幅62cm 身幅62cm 袖丈56.5cm

MATERIAL : 表地 : Cotton70% GOMMA30%
裏地 : Cotton100%

85AW STONE ISLAND RASO GOMMATO Coloured Cover

1985年秋冬に登場した「Raso Gommato Coloured Cover」は、ストーンアイランドの黎明期を代表する象徴的な一着であり、マッシモ・オスティの思想を最も鮮やかに映し出すアーカイブピースです。1982年にイタリア・ボローニャで誕生したストーンアイランドは、当時のファッション業界の中で異彩を放つ存在でした。ブランドの創設者であるマッシモ・オスティは、グラフィックデザイナー出身という異色の経歴を持ち、服飾の世界においても従来のデザイン文脈に縛られない発想を貫いていました。彼にとって衣服とは単なる美的対象ではなく、環境に対応し、身体を保護し、情報を宿す「機能的な道具」であるべきだという明確な思想がありました。

その思想を最も端的に示すのが素材研究へのこだわりです。オスティはミリタリーウェアやワークウェア、アウトドアギアを収集し、実際に解体して縫製や生地構造を徹底的に分析しました。その過程で彼は既存の素材の持つポテンシャルを引き出し、都市生活に適した新たなファブリックを開発しました。その成果として生まれたのが「Raso Gommato(ラソ・ゴマート)」です。

ラソ・ゴマートとは、厚手のコットンサテン生地の裏面にラバーコーティングを施した画期的な素材です。コットンサテンの柔らかさと上品な光沢に、ラバーによる防風性・防水性を融合させることで、従来にはなかった強度と機能性を持たせることに成功しました。この組み合わせはミリタリーの堅牢さをファッションに落とし込みながらも、単なる軍用服の再現にとどまらず、新しい衣服の未来像を提示しています。また、ラバーコーティングによって生地は独特の質感を得ており、光の当たり方によってマットで重厚な表情と繊細な光沢を併せ持つユニークな存在感を放ちます。

さらに「Coloured Cover」と名付けられているように、本作はガーメントダイ(製品染め)によって仕上げられています。縫製後に染色を施すことによって、ボディやステッチ、金具に至るまで一体的に染め上げられ、深みのある色調が生まれています。この技法は着用を重ねることで独特の経年変化を見せ、ラバーコーティングとの相乗効果で一点ごとに異なる表情を宿すことになります。新品時の強さと、時間の経過とともに生まれる味わいの両方を楽しめる点は、コレクターや研究者の間でも高く評価されています。

デザイン面でも実用性を重視した構造が特徴です。フロントは防風性を意識したジップとボタンの二重構造となっており、立ち上がりのある襟は外気を遮断しつつ独特の存在感を演出します。胸部や腰部には使い勝手に優れたポケットが配置され、都市生活やアウトドアでの利便性を兼ね備えています。そして裏地にはサーマルライニングが採用されています。保温性を高めるための実用的なディテールであり、見た目の機能美だけでなく、実際の着用においても快適さを追求していることがうかがえます。このように「デザイン」と「実用性」を一体化させる姿勢は、まさにオスティの哲学そのものです。

また、このジャケットが特筆される理由のひとつに、その希少性があります。ラソ・ゴマートはストーンアイランド初期を代表するファブリックであり、今日ではブランドの資料としても扱われるほど重要な位置づけにあります。なかでも1985年秋冬の「Coloured Cover」モデルは現存数が少なく、状態良好な個体は市場にほとんど出回りません。オスティ期のアーカイブは世界中のコレクターや研究機関から注目されており、このジャケットはその中でも特に貴重なサンプルのひとつといえます。単なるファッションアイテムを超え、ストーンアイランドの思想や歴史を読み解くための一次資料ともなる存在なのです。

マッシモ・オスティは「衣服は人間の第二の皮膚であり、環境に適応するシステムである」と語りました。この一着には、その言葉が具現化されています。ラソ・ゴマートによる耐候性、サーマルライニングによる快適さ、製品染めによる豊かな表情。それらはすべて、単に美しく見せるための装飾ではなく、人間の生活に実際に寄り添うための仕組みとして設計されています。そしてその設計思想は、ファッションが時代とともに移ろうなかでも変わらない普遍的な価値を持ち続けています。

1980年代半ばという時代背景を考えると、このジャケットの存在はより際立ちます。当時のファッションにおいて、ここまで徹底して素材研究を行い、機能性をデザインの核に据えたブランドはほとんど存在しませんでした。ストーンアイランドはミリタリーやワークの文脈を取り込みながらも、独自の研究成果をもって「未来の服」を提示した稀有な存在であり、その成果のひとつがこのラソ・ゴマートに他なりません。

この「Raso Gommato Coloured Cover」は、単なるアウターウェアを超え、ストーンアイランドの理念そのものを象徴する作品です。資料的価値を持つほど希少でありながら、今なお現役で着用できる実用性を備えていることも特筆すべき点です。マッシモ・オスティが追い求めた「実験と革新の精神」は、この一着を通じて今も生き続けています。纏うことでブランドの歴史を感じ、時代を超えた普遍性を体感していただけるでしょう。