1980's BONEVILLE Cotton Nylon Sail Jacket with Polyurethane Coating
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¥129,800 - 定価
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¥129,800
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COLOR : NAVY
SIZE 48:着丈69cm 身幅62cm 裄丈76cm
MATERIAL : Cotton,Nylon,Polyurethane
19世紀の質実剛健なワークウェアや軍実物品としてのミリタリーウェアから、2000年代の洗練されたモダンアーカイブにいたるまで、衣服の歴史は常に時代の要請とデザイナーの思想によって形作られてきました。当店が目指すのは、単なるヴィンテージ古着の販売に留まらず、これら悠久の時をサバイブしてきた衣服の意匠を多角的な視点から紐解き、ゆくゆくは一冊の服飾史として結実するような資料的価値の高いコレクションを蓄積していくことです。その壮大なアーカイブの系譜において、1980年代というポストモダン期に突入した衣服のデザイン史に「テキスタイルの技術革新」という全く新しい概念を持ち込み、現代のテックウェアやストリートモードの基礎を築き上げた天才がいます。それこそが、イタリアが産んだインダストリアルデザイナー、マッシモ・オスティ(Massimo Osti)です。今回ご紹介する衣服は、オスティが1981年にローンチした伝説的ブランド「BONEVILLE(ボネビル)」において、1980年代初期(1982年〜1985年頃)に製造された「コットンナイロン・ポリウレタンコーティング・セイルジャケット」です。オスティの代名詞であるC.P. CompanyやStone Islandの初期アーカイブと血脈を同じくしながらも、海のワーク・ミリタリーの文脈を色濃く反映した本作は、経年変化によってまるでアンティークのオイルドコットンやヴィンテージレザーのような重厚な風合いへと育った良好なコンディションを保っています。本作は、ファブリックの先駆性、プロダクトコードが証明する歴史的価値、そして衣服としての完成度のすべてにおいて、服飾資料としての価値を極限まで高めたマスターピースです。
本作を解き明かすためには、衣服のデザインを「形」ではなく「素材の科学」として再定義したマッシモ・オスティの思想を紐解く必要があります。1970年代にC.P. Companyの前身であるチェスター・ペリーを始動させ、1982年にStone Islandを誕生させたオスティは、イタリア・ボローニャのアトリエに数千着に及ぶ世界各地のミリタリーやワークウェアのアーカイブを蒐集し、その機能性と縫製仕様を徹底的に研究していました。彼にとって衣服作りとは、過去の優れた実用ディテールをサンプリングし、それを独自の染色技術や特殊コーティングによって、全く新しい都会的なモダンウェアへと昇華させる作業でした。そのオスティが1981年に新たに立ち上げた「BONEVILLE(B.N.V.)」は、彼のキャリアにおいて極めて重要な役割を担っていました。同時期に誕生したStone Islandが「陸のミリタリー」や「堅牢な防護服」としての実験場であったのに対し、BONEVILLEは「海(マリンスポーツ・セーリング・ボート・海軍)」の世界観をベースに、よりスポーティで都会的なエレガンスを追求するレーベルとして組織されました。当時のヨーロッパの富裕層の間で盛んだったヨットレースやクルージングといった海洋文化と、オスティが得意とする海軍のミリタリーワークが融合したBONEVILLEのプロダクトは、1980年代のカジュアルズからも熱狂的な支持を集めました。本作は、そのBONEVILLEが最も純度の高かった最初期、すなわちオスティ本人がすべてのテキスタイル開発とディレクションを指揮していた1980年代初期に産み落とされた、同ブランドのアイデンティティそのものを体現するジャケットです。
本作の資料的価値を最も決定づけている要素は、内タグに記載された「50% COTTON, 30% NYLON, 20% POLYURETHANE」という、1980年代当時としては驚異的な先駆性を誇ったファブリックの組成にあります。現代でこそ珍しくないこのハイブリッドな配合ですが、オスティはこの時代に、コットンとナイロンを高密度に交織した頑強なウェザークロスをベースとして採用し、その表面に特殊な「ポリウレタン樹脂(ラバーコーティング)」を熱圧着させることで、完全な防風・防水性と耐久性を備えた全全天候型のボーティングファブリックを完成させました。それは、伝統的な天然素材の世界に、近代的な化学テクノロジーを衝突させるという、オスティならではの錬金術的なアプローチでした。そして、40年以上の歳月を経た現在、このファブリックはアンティーク衣服が持つインディゴの経年変化やリネンのフェードとは全く異なる、「1980年代のテックファブリックだけが到達できる芸術的な美しさ」を放っています。ポリウレタンコーティングの表面には、長年の着用や気候の変化、摩擦によって、まるで大理石の紋様のような「マーブルエフェクト」や、白い線が走る「チョークマーク」が縦横無尽に刻まれています。これは樹脂が経年によって適度に摩耗し、ベースのコットンナイロンの質感が部分的に浮き上がってくることで生まれた、唯一無二の天然のグラデーションです。一見すると、上質なヴィンテージレザーが芯擦れを起こしたような、あるいはオイルドジャケットが長い歴史を経て鈍い光沢を放っているかのような重厚なオーラを漂わせています。化学繊維を用いた服は一般的に劣化するものと考えられがちですが、オスティのアーカイブにおいては、その樹脂の変化すらも計算された美しいエイジングへと昇華されており、これこそが現代のストリートやテック系のコレクターから本作が美術品のように高く評価される最大の所以です。
衣服の歴史的証拠を確固たるものにするのが、内タグの下部に印字された「0A166016」というプロダクトナンバー(Art No.)です。C.P. Companyグループの製品は、1980年代後半以降になると「Art.」の規則性が完全にシステム化されますが、本作に配されているのは、その規則が確立される以前の、1980年代初期から中期に見られる非常に古いナンバリング形式です。この形式は、C.P. CompanyがSPWへと大規模な組織移行を行う前後の、1980年代前半(1982年〜1985年頃)に生産された極めて初期の個体であることを明確に示す、服飾史における貴重な歴史的エビデンスです。大量生産の波に呑まれる前、オスティのクリエイティビティがアトリエのなかで最も濃密に発揮されていた時代の空気感を、このシリアルコードが克明に現代に証明しています。
意匠を細部まで観察すると、ヨットやボートのセーリング時における過酷な洋上環境をサバイブするために考案された、実用主義とオスティ流のデザインセンスが細部まで高密度に詰め込まれていることが分かります。フロントは頑強なジッパーとスナップボタンによる重層的な比翼仕立てになっており、洋上での激しい水しぶきや寒風の侵入を完璧にシャットアウトします。フロントのジッパーを開けた内側の見返し部分には、赤文字に緑地という鮮烈な配色で「BONEVILLE」のブランドネームが配置されており、インサイドにまで手抜かりのないデザインのこだわりを感じさせます。
フロントに配置された圧倒的な存在感を放つポケットワークは、本作の実用性を象徴する重層的な構造を持っています。左右の腰部分には、大きな容量を誇り、手袋などを収めるためのフラップ付きポケットが配されている一方で、そのすぐ直上には、白い引き手(ストラップ)が付属したジップ開閉式のポケットが別個で横方向に設置されています。この二層構造のポケットは、波しぶきから守るべき重要な計器や書類をフラップ内に収めつつ、頻繁に出し入れする小物を引き手付きのジップポケットで迅速に処理するという、セーリングジャケット本来の冷徹な機能美から導き出されたものです。この白い引き手のコントラストが、ダークトーンのボディにおいて視覚的な素晴らしいアクセントとなっています。
左胸に配された「BNV SPORTING GOODS」のグラフィックは、ボリュームのあるウール混のパイル状に仕立てられたサガラ刺繍によって表現されています。ミリタリーワークの無骨なボディに対して、この1920年代や30年代のカレッジスポーツや伝統的なクラブチームを彷彿とさせるクラシックな刺繍をハイブリッドさせることで、独特な気品を衣服に与えています。高めに設計されたスタンドカラーの内部には、軽量なナイロンファブリックで作られたフードが完全に収納されています。通常時はフードを襟内に収めることで首回りの防風性を高め、荒天時にはフードを引き出して頭部を完全に保護する、セーラージャケットとしての本質的な二重構造が完成されています。さらに、最も摩擦や負荷がかかる肘部分には、独特の美しい曲線を描くステッチワークでエルボーパッチが丁寧に縫い付けられています。また、裾部分には頑強なゴムが走っており、身幅のダイナミックなボリュームを裾でキュッとホールドすることで、丸みを帯びた、1980年代のオスティ特有のモダンなバルーンシルエットを構築しています。
現代のファッションシーンにおいて、本作の価値を決定的に高めているのが「Size 48」という、現代の大人が最もスタイリッシュかつリラックスして着用できる完璧なゴールデンサイズであるという点です。1980年代当時のオスティのアーカイブは、パターンワークが非常に立たる体かつ前衛的であったため、個体によっては現代の日常着としてバランスを取ることが難しいケースが多々あります。しかし、この48サイズは、肩のラインが自然にドロップし、身幅にたっぷりと取られた生地の余白が、動くたびにポリウレタンコーティング独特の重厚で力強いドレープを生み出します。ヴィンテージ本来のスポーツワークとしての機能性をしっかりと宿しながらも、着用した際にはまるで現代のハイメゾンが計算して作り上げた高級なオーバーサイズブルゾンのような、洗練された都会的なスタイルへと完璧に昇華させることができます。
当店がこのBONEVILLEのセイルジャケットを「資料的価値の高いアイテム」として位置づける理由は、単に古いイタリア製のテックウェアであるからではなく、1980年代という衣服のデザインがテクノロジーと融合した激動の記憶、マッシモ・オスティという一人の天才が遺したテキスタイル革命の足跡、そして初期シリアルコード、サガラ刺繍や収納フード、引き手付きの重層ポケットといった唯一無二のディテールが、ポリウレタンコーティングの奇跡的なエイジングとともに、完璧な状態で一つの衣服にパッケージされているからです。希少なヴィンテージを所有することの意義は、その衣服に宿る「確かな価値の根拠」と歴史の断片を、自らのワードローブの一部として引き継ぐことにあります。衣服をただ消費するのではない、その背景にある歴史やコンテキストを読み解き、クローゼットに迎え入れること。それは、一冊の壮大な服飾の本の、重要な1ページを所有することと同義です。時空を超えて現代に圧倒的な存在感を留めるこのイタリアン・ヴィンテージの至宝は、時代や流行がどのように移り変わろうとも、決して色褪せることのない universal な価値を、それを纏う者に与え続けてくれるでしょう。当店が良いと思うアイテムの集積として、この先も未来へ遺すべき「美しい遺産」の筆頭として、自信を持っておすすめいたします。


