C.P.COMPANY

83AW C.P.COMPANY LEATHER HUNTING JACKET

定価
¥129,800
定価
特価
¥129,800
Tax included
COLOR : BROWN

SIZE 52:着丈87cm身幅62cm裄丈91.5cm

MATERIAL : 表地:Leather100%
裏地:Wool80% Nylon20%

83AW C.P.COMPANY LEATHER HUNTING JACKET

83AW C.P. COMPANYのレザーハンティングジャケットは、マッシモ・オスティが手掛けたプロダクトの中でも特に素材への探究心と染色哲学が鮮明に現れている名作です。1980年代初頭のC.P. COMPANYは、すでにガーメントダイや異素材の組み合わせといった革新的な試みを積極的に展開しており、クラシックなワークウェアやミリタリーウェアをベースとしながら、それらを現代都市生活者のために再解釈することを大きなテーマとしていました。このジャケットもその系譜に位置付けられるもので、伝統的なハンティングジャケットをベースにしながら、レザーやスエード、シェアリングを融合させることで、他に類を見ない存在感を放っています。

まず特筆すべきは、全体を覆う肉厚なレザーの質感です。非常に堅牢でありながら、着込むことで柔らかさを増し、艶が深まっていくという経年変化を楽しむことができます。ハンティングジャケットというタフな機能服のフォーマットに、あえてこの重厚な素材を選んでいる点に、オスティらしい実験精神が表れています。肩や袖口にはスエードが切り替えとして用いられていますが、これは摩耗への耐性を高める実用的な目的を持ちながらも、同じレザーでありながら仕上げの異なる素材を組み合わせることで、陰影に富んだ表情を生み出しています。襟にはシェアリングが配されており、これは生後一年以内の子羊の毛皮を鞣して毛足を残したまま仕上げた素材です。一般的な「ムートン」とは異なり、均一な毛並みを持たせる加工がなされており、防寒性とともに柔らかさを兼ね備えています。ハードなレザーに柔らかなニュアンスを加えるこのディテールは、ジャケット全体の調和を取る重要な要素となっています。

そしてこのジャケットの最大の特徴は、内側に秘められた赤い染色のディテールです。ショルダー部分やチンストラップの裏、さらに背面プリーツの内側に鮮やかな赤が配されており、着用者が動いたときにだけその存在が現れます。静止しているときには重厚なブラウンレザーのジャケットとして見えますが、動作とともにふと覗く赤が視覚的なアクセントとなり、力強い印象を与えます。この「動きの中で初めて完成するデザイン」という考え方は、オスティのデザイン哲学を端的に表しているものです。彼は服を単なる静止したオブジェクトとして捉えるのではなく、着用者の動作や日常の中で変化する「動くキャンバス」として考えていました。そのため、赤いディテールは単なる装飾ではなく、着ることで初めて意味を持つ仕掛けとして機能しているのです。

当時のC.P. COMPANYでは、使用するレザーの種類によって染め分けを行う試みが行われていました。例えば牛革には赤、山羊革には異なる色といった具合に、素材そのものの個性を引き出すために色彩を与えていました。本作に見られる赤の染色も、ブラウンレザーの重厚感をさらに引き立てつつ、裏側に秘められた彩りとしてデザインに奥行きを加えています。これによって、ジャケットは表面的な堅牢さだけでなく、動作による意外性や視覚的な驚きを生む存在となっています。単なる裏地の色ではなく、素材と色彩を結びつけるオスティの思想が反映されたディテールであることがわかります。

また、背面に設けられたプリーツ構造も重要なポイントです。これは肩の可動をスムーズにするための機能的ディテールですが、その内側に赤を配することで、実用性とデザイン性が一体となって発揮される仕掛けとなっています。機能と美を両立させるこの発想は、オスティが一貫して追求してきたテーマであり、後のC.P. COMPANYやSTONE ISLANDに受け継がれていく数々の実験的なデザインへとつながっていきます。

1983年秋冬という時代背景も、このジャケットを理解する上で欠かせない要素です。当時のC.P. COMPANYはすでにヨーロッパのファッションシーンにおいて確固たる地位を築き始めており、単なるスポーツウェアやカジュアルウェアの枠を超えた「機能を持つ日常着」として高く評価されていました。その根底にあったのは「実用服の再解釈」であり、狩猟や軍事といった実用的な背景を持つ服をベースにしながら、それを現代生活に適したかたちへと変換するアプローチです。このレザーハンティングジャケットも、ハンティングというフィールドでの用途を都市生活におけるアウターへと置き換える試みであり、素材の重厚さと染色の革新性が結びついた象徴的な成果といえます。

こうしたプロダクトは、一時代のファッションアイテムにとどまるものではなく、オスティの思想そのものを形にした存在です。堅牢なレザーにスエードとシェアリングを組み合わせ、さらに赤い染色を潜ませることで、実用性と美しさを共存させることに成功しています。そこには「服は着て動いて初めて完成する」という哲学が通底しており、静止した状態では決して見えない魅力が内側に隠されています。このジャケットはまさにその象徴であり、1980年代初頭のC.P. COMPANYが到達していたデザインの深度と実験精神を示す稀有なアーカイブといえます。