1990s FACONNABLE Leather Collar Swing Top

1990s FACONNABLE Leather Collar Swing Top

フランス・ニースにて1950年に創業した FACONNABLE（ファソナブル） は、リヴィエラ地方特有の優雅なライフスタイルを体現するブランドとして知られています。リゾート地の陽光やカジュアルでありながら気品を失わないフランス的感性を反映し、1950年代から90年代にかけてヨーロッパのラグジュアリーカジュアルを牽引してきました。ファソナブルは、サン＝トロペやカンヌといった地中海沿岸でバカンスを楽しむ紳士たちに支持され、やがて世界的な地位を確立しました。その哲学は「リラックスとエレガンスの共存」であり、スーツやジャケットといったクラシックな要素と、スポーツやアウトドア由来の実用性を調和させることにあります。

一方で、1990年代はファッションにおいて「カジュアル化」が一層進んだ時代でした。トラディショナルなブランドも新しいアプローチを模索し、スポーツウェアやワークウェアをベースにしたデザインを取り入れながらも、ラグジュアリーな要素を盛り込みました。本品「Leather Switching Swing Top」も、そうした時代の空気を背景に誕生したアイテムです。

デザインのベースとなっているのは、英国のハリントンジャケット／スウィングトップの系譜です。短丈でリブを備えたブルゾン型は、1930年代にイギリスで生まれ、ゴルフやスポーツ観戦用の軽快なアウターとして普及しました。その後、モッズやスキンズといったユースカルチャーにも取り入れられ、英国カジュアルを象徴するアイテムとなります。ファソナブルがこのスタイルを取り入れることで、トラディショナルな精神を残しつつ、90年代的なラグジュアリーカジュアルへと昇華させたのです。

本品の大きな特徴は「襟のレザー切り替え」にあります。ナイロンを主体とした軽快なシェルに対し、襟にのみスエード調のレザーを配することで、視覚的なコントラストと高級感を演出しています。この切り替えは単なる装飾ではなく、襟周りの耐久性を高める実用性も兼ね備えており、機能とデザインが両立しています。さらに裏側に配された鮮やかなイエローのライニングが、表からちらりと覗くことで華やかさを添え、フランスブランドらしい遊び心を感じさせます。

素材にはナイロンを採用し、軽量性と耐久性を確保しています。当時のファソナブルはスポーツやアウトドアの機能素材を積極的に取り入れ、日常着に落とし込む試みを行っていました。ナイロンシェルは撥水性を持ち、秋冬シーズンのアウターとして十分な実用性を発揮します。袖口や裾のリブも程よく厚みがあり、冷気の侵入を防ぐと同時にシルエットを引き締めています。

シルエットは90年代らしいリラックス感を備えつつも、過度にオーバーサイズではなく、現代的なスタイリングにも適応します。ジーンズやチノと合わせればカジュアルに、スラックスと組み合わせれば上品なブルゾンとしても成立し、スタイリングの幅広さは非常に魅力的です。

コンディションについても、この年代のナイロンアウターは経年劣化や破損が見られることが多い中、本品は良好に保たれており、90年代の空気感を色濃く残しています。襟のレザーも適度なエイジングを見せ、より一層深みを感じさせる表情に育っています。

「90s FACONNABLE Leather Collar Swing Top」は、フランス的な洗練と英国カジュアルの伝統、さらに90年代の時代性が交錯したユニークな存在です。スポーティでありながらエレガント、実用的でありながら遊び心を忘れないという、ファソナブルが掲げた哲学を体現した一着です。今日では市場に出回る数が少なく、特にレザー切り替え仕様のモデルは希少性が高いため、コレクションピースとしても高く評価されます。

袖を通せば、90年代ヨーロッパのラグジュアリーカジュアルの気風を肌で感じることができるでしょう。それは単なるファッションを超え、地中海的な余裕と洗練を纏う体験でもあります。