1950's Czechoslovakian Army Dubaky Camouflage white trim Reversible Sniper smock
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¥198,000 - 定価
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¥198,000
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COLOR : DUBAKY CAMO
SIZE ONE:着丈62cm 身幅69cm 裄丈74cm
MATERIAL : COTTON 100%
濃淡のグリーンとサンドベージュ、そして黒に近いダークブラウンが複雑に重なり合うドゥバキーカモ。その抽象画のようなパターンの裏側には、ただの迷彩服では語り尽くせない歴史があります。もともとこの生地は、東欧圏で運用されていたスナイパースモック用に開発されたもの。森や藪に潜み、じっと息を潜める狙撃兵のためだけに作られた、非常に特殊な用途のウェアでした。
本来のスナイパースモックは、プルオーバー型のゆったりとしたシルエットで、顔まで覆える大きなフードと、手の甲まで隠す一体型のグローブが付属するのが特徴です。下には通常の戦闘服や装備を着込む前提で設計されていたため、オーバーガーメントとしてゆとりのあるパターンメイクが取られ、動かずに長時間待機する狙撃兵を風や枝から守る“シェル”のような役割を担っていました。視認性を下げるために金属パーツや光を反射するディテールはできるだけ抑えられ、生地の質感や柄の配置にまで徹底して配慮された、いわば当時の「ステルスウェア」とも言える存在です。
今回の一着は、そのスナイパースモックをベースにしたモディファイ個体。元々はフードやグローブが付属していたであろう仕様から、街着として日常的に着られるように、襟付きジャケット型へと仕立て直されています。とはいえ、使用されている生地そのものは当時のオリジナル。ドゥバキーカモ特有の有機的なパターンや、ミリタリーならではの色調バランスは一切失われていません。むしろ、スモック特有の過剰なディテールが削ぎ落とされたことで、柄そのものの美しさがより前面に引き出されています。
歴史的背景をもう少し掘り下げると、この手のスナイパースモックは、冷戦期の東欧軍の中でもごく一部の狙撃兵や偵察部隊など、選別された兵科のみに供給されていたと考えられています。一般兵士が着用する標準被服とは異なり、生産数も配備地域も限られていたため、当時から希少性の高い装備でした。戦後の再編成や装備更新の中で多くが廃棄・処分されており、現代まで生地として残っているだけでも十分に奇跡的と言えるレベルです。
狙撃兵用の特殊装備であったことを物語るのが、このドゥバキーカモのパターン設計。よく見ると、ひとつひとつの斑点は角ばった幾何学ではなく、木の葉や苔、影が溶け合ったような柔らかく不定形なシルエットで構成されています。これにより、森林の木漏れ日や、揺れる枝葉のざわめきの中で輪郭を曖昧にし、人間の姿を背景へと溶かし込む効果が生まれます。遠距離から光学照準器越しに見たときにこそ真価を発揮する、非常に実戦的なカモフラージュです。
そんな“見えないための服”が、2020年代のストリートやファッションシーンでは、むしろ「強く見える服」として機能するのが面白いところ。襟付きのシャツジャケット型にモディファイされているおかげで、ブラックのワイドパンツやテーラードトラウザーズ、デニムにもすっと馴染みます。無地の上にさっと羽織るだけでスタイリングが完成し、古着好きにも、モード寄りのスタイルが好きな方にも、しっかり響く存在感です。
コンディションも申し分なく、ヴィンテージのスナイパー由来のアイテムとしては驚くほど良好な状態を保っています。激しい色抜けや破れ、過度なリペアも見られず、生地のハリと発色、カモフラージュパターンの輪郭がきれいに残っている個体です。ハードなフィールドテストを繰り返してきたであろう本来の用途を考えると、この状態で残っていること自体が、ひとつの奇跡に近いと言っても大げさではありません。
また、モディファイされているからこその価値も見逃せません。オリジナルのフード付きスモックは確かにアーカイブとしての魅力が強い一方で、日常ユースには少しハードルが高いことも事実です。こちらは当時の生地とパターンをそのままに、襟付きデザインに変えることで、スモック感覚で気軽に羽織れる一着に生まれ変わっています。それでも元のスナイパースモック由来のゆとりあるシルエットは健在で、インナーを選ばずレイヤードを楽しめるのも嬉しいポイントです。
ミリタリーアーカイブとしての背景を持ちながら、現代のワードローブにすっと溶け込むバランスの良さ。希少なドゥバキーカモのスナイパースモック生地を使ったモディファイジャケットは、単なる「珍しい古着」ではなく、歴史とデザインが共存したアートピースのような存在です。資料性の高い迷彩を実際に着て楽しめる数少ない機会として、マニアックなミリタリーラバーの方はもちろん、誰とも被らない主役級の一着を探している方にも、ぜひ袖を通していただきたいアイテムです。


