Hermes Nylon × Leather Trimmed Single Riders Jacket

Hermes Nylon × Leather Trimmed Single Riders Jacket

このジャケットは、HERMÈS のクラフツマンシップとモードの先鋭性が見事に融合した、稀少なレザー×ナイロンのライダースジャケットです。

艶やかなブラックのナイロンシェルに、上質なラムレザーでトリミングを施した構築的なデザインは、一見ミニマルでありながら、纏った瞬間に空気が変わるような存在感を放ちます。軽やかでしなやか、そしてどこか冷ややかな美しさが漂うその佇まいは、まさに “静かなラグジュアリー” を体現しています。

Hermès におけるナイロン素材のアウターは極めて稀です。レザーやカシミヤといった高級素材を主軸とするブランドが、あえてこのテクニカルファブリックを選ぶ理由、それは軽さの中に潜む強さを追求した結果にほかなりません。

表面のナイロンは上質な高密度織りで、わずかに光を反射するマットな艶感が特徴です。裏地にはしっとりとした手触りのポリエステルを配し、袖通しの良さと耐久性を兼ね備えています。レザーは全てフルグレインのラムスキンで、襟元、ショルダー、ポケット縁、裾、袖口に至るまで、精緻にトリミングが施されています。このレザーの縫い合わせの美しさは、熟練職人ならではの滑らかさです。

シルエットは、ミリタリーベースのシングルライダースをモチーフにしつつ、Hermès らしい都会的なエレガンスで再構築されています。

肩にかけてのラインはやや前振りに設定され、着用時に自然な立体感が生まれます。襟元にはレザーベルト付きのストラップを備え、ファスナーを上まで閉じるとハイネックとしての防風性を発揮。ファスナーを開ければ、自然に首元へドレープを描く美しい曲線を見せます。フロントはシルバーのメタルジップで開閉し、ポケットは斜めにカッティングされたジップ仕様。ファスナーの引き手にもさりげなく「Hermès」の刻印が入り、細部へのこだわりが光ります。

ウエストの両サイドにはレザーベルトが配されており、バックルで絞ることでシルエットを自在に調整できます。これは実用性だけでなく、ジャケットの構造線を美しく見せるための意匠でもあります。実際に手に取ると、Hermès のレザー仕立てがナイロン生地を支えるように縁取っている構造がわかります。軽量ながら、手に感じる存在感はまさに本物の仕立て服のそれです。

このジャケットの魅力を語るうえで欠かせないのは、「余白の美学」です。Hermès はしばしば「引き算のデザイン」を用いて、装飾よりも素材と構造で魅せるアプローチを取ります。このアイテムもまさにその代表例。ブランドロゴやアイコニックな装飾を排し、ひたすら“質感と構造の美”で完結しています。

現行のエルメスにおいても、このようなナイロン×レザー構成のジャケットはほとんど生産されていません。素材の選定、縫製コスト、そして何より「Hermès の哲学としての潔さ」を理解する職人が減っているためです。その意味で、この一着は単なるアウターではなく、時代の空気を封じ込めたアーカイブピースと言えます。

サイズ表記は52。日本サイズでL程度の着用感があり、薄手のニットやシャツの上から軽快に羽織れるバランスです。スタンドカラーの襟元を立ててミニマルに、または開いてリラックスした印象で。スタイリング次第で、都会的にもスポーティにも表情を変える万能な一着です。

状態は非常に良好。レザーのトリム部分にわずかな経年変化は見られますが、全体の艶感・形状ともに理想的なコンディションを保っています。ナイロン部分に擦れや汚れはなく、メタルパーツの光沢も健在です。

軽さ、静けさ、そしてHermès らしい品格。この三つを兼ね備えたジャケットは、日常を格上げするアウターとして、またコレクションピースとしても申し分のない存在です。

ただのライダースでは終わらない、「Hermès が作るとこうなる」という完成形を、ぜひ袖を通してご体感ください。