C.P.COMPANY

94AW C.P.COMPANY CORDUROY PADDED JACKET BY ROMEO GIGLI

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COLOR : NAVY

SIZE:52 着丈cm 肩幅cm 身幅cm 袖丈cm

MATERIAL : COTTON

94AW C.P.COMPANY CORDUROY PADDED JACKET BY ROMEO GIGLI

1990年代、C.P. Companyが持っていた“都会的知性とロマン”を象徴する一着が、この1994年製「CORDUROY PADDED JACKET」。デザイナーは、イタリアモードを牽引した鬼才ロメオ・ジリ(Romeo Gigli)。彼がC.P. Companyのクリエイティブを手掛けていたごく短い時期の作品であり、その希少性は今日では驚くほど高いものとなっています。90年代初頭、ストーンアイランドやC.P. Companyがテクニカルウェアの進化を追求していた中で、ジリはその方向性に“詩的な感性”を注ぎ込みました。彼が描いたC.P.の服は、ミリタリーでもワークでもなく、あくまで“人間の温度”を持ったデザイン。それが最も美しく現れているのが、このコーデュロイジャケットです。


生地には中畝のコットンコーデュロイを採用。触れた瞬間にわかる柔らかさと重量感のバランスは、現代の量産ではまず再現できません。深いブルーのトーンは、光の角度によって淡くも濃くも変化し、まるで時間の経過そのものを閉じ込めたかのよう。経年による褪色が天然のグラデーションを描き、ひとつとして同じ表情を持たない個体差を生み出しています。見るたびに印象を変えるこの“色の深さ”こそが、90年代C.P. Companyの魅力であり、ジリが追い求めた「静かなエレガンス」の体現です。


シルエットはゆったりとしたボックス型で、肩にかけて自然に落ちるラインが美しい。フロントのボタンをすべて留めればミニマルなスタンドカラー、ラペルを折り返せばテーラードジャケットのような表情へと変化します。つまりこの一着は、スタンドカラーとテーラードの二面性を備えたデザイン。ワークウェアの機能性とドレスの品格を同居させた、極めて完成度の高い構造美を持っています。これほどまでにバランスの取れたデザインは、当時のC.P.の中でも稀有な存在でした。


内側には中綿が仕込まれ、保温性も抜群。表面のコーデュロイとの組み合わせにより、柔らかく包み込むような着心地を生み出しています。ジリらしいのは、この“包まれる感覚”の演出。彼はC.P.在籍当時、「服は身体を飾るものではなく、守るシェルである」と語っています。その思想がこのジャケットの随所に息づき、まるで布が空気を含みながら形を保つような、独特のボリュームを形成しています。


また、1994年という時代にも特別な意味があります。C.P. Companyがイタリアンモードの中で最も創造的だった時期であり、Massimo Ostiが築いた“機能の哲学”に対し、ジリが“詩的感性”を融合させた数年間。この短い交差の時代に生まれたプロダクトは極めて少なく、現存するものも年々市場から姿を消しています。とくにこのような深いブルーのコーデュロイ素材は当時でも製造が難しく、わずかなロットのみで展開されたとされます。そのため、現在ではコレクターズピースとして海外でも高値で取引される希少アーカイブのひとつです。


袖を通すと、驚くほど軽く、それでいて温もりに包まれる感覚。ボタンを上まで留めれば端正で知的な印象を生み、ラフに羽織れば抜け感のあるリラックススタイルに。インナーにはシャツでもタートルでも相性が良く、モードからクラシックまで幅広いスタイリングに馴染みます。現代のブランドがリバイバルを繰り返す中で、このジャケットには「本物の時代の空気」が宿っているのです。


単なる古着ではなく、イタリアンデザインの黄金期を象徴するアーカイブ。ブルーの美しさ、構造の完成度、そしてロメオ・ジリというデザイナーの哲学。すべてが重なって生まれた、この1994年製C.P. Companyのコーデュロイジャケットは、まさに“詩情を纏う服”です。静かで、知的で、どこか儚い。けれども袖を通した瞬間に確かな存在感を放つ。そんな特別な1着が、今、ここにあります。