Made in France HERMES マルジェラ期 cashmere varruse shirt

Made in France HERMES マルジェラ期 cashmere varruse shirt

一見しただけでただならぬ気配を纏う一着。

こちらは、Martin Margiela（マルタン・マルジェラ）が ウィメンズプレタポルテのデザイナーを務めた1997年から2003年のHERMÈS黄金期に生み出された「Varruse（ヴァリューズ）シャツ」。その中でも極めて希少な、カシミア素材のモデルです。

マルジェラ期のHERMÈSが現在に至るまで語り継がれる所以は、単にミニマルな服作りに留まらず、タイムレスで、身体と日常生活に寄り添う知性のあるエレガンスを極めた点にあります。このシャツは、まさにその体現。極限まで装飾を削ぎ落としたプレーンな面構えは、着る人の所作や生き方までも引き立てる静かな強さを備えています。

素材には、HERMÈSが誇る最高級カシミアを贅沢に使用。手に取った瞬間にわかるその柔らかさと、羽のような軽やかさ。着用時には肌にふんわりと寄り添い、まるで自らの体温を織り込んでくれるような心地良さをもたらします。繊維の一本一本が細やかに均整を保ち、洗練された光沢を放ちながらも、決して主張しすぎることのない落ち着いた佇まい。

特徴的なのは、深く切り込まれたV字のフロントデザイン。ボタンのない開きは、マルジェラらしい実験性と、HERMÈSのクラフトマンシップが絶妙に交錯するディテールです。インナーとのレイヤード次第でさまざまな表情を見せ、着る人の自由な解釈を許容する懐の深さがあります。袖口はシンプルなカフス仕様で、わずかに溜まるカシミアのドレープが陰影を生み、どの角度から見ても詩的な美しさを漂わせます。

シルエットはごく緩やかなオーバーサイズ設計。肩のラインをストレスなく流れ、体を締め付けることのないリラックスした構造。それでいて、ルーズになりすぎず、どこか端正さを保ち続けるあたりに、マルジェラの緻密なパターン設計の妙が光ります。

色は限りなく黒に近い深いチャコールカラー。漆黒とは異なり、光の加減でニュアンスが生まれる絶妙な色調です。日常にすっと馴染みながらも、ふとした瞬間に「これは何かが違う」と気づかせてくれる、そんな特別感を纏っています。

現在では極めて入手困難となったマルジェラ期のアーカイブピース。中でも本作のように、HERMÈSの最高品質のカシミアが用いられ、かつ彼のフィロソフィーが色濃く刻まれたアイテムは、年々価値を高め続けています。サイズは36。タイトすぎず、ユニセックスでの着用も視野に入る、絶妙なバランスの一枚です。

機能性・素材美・静かな知性。すべてを内包しながらも、それを声高に語ることのないこのシャツは、服に言葉以上の力を求める方にこそ、静かに届くはずです。