HERMES Pigskin Suede Double Breasted Jacket with quilting liner

HERMES Pigskin Suede Double Breasted Jacket with quilting liner

このジャケットは、エルメスが誇るレザーワークの真髄を体現する一着です。素材には、ラグジュアリーブランドの中でもほとんど用いられることのない「ピッグスキン（豚革）」を採用。上質な素材ながら非常に扱いが難しいことで知られ、熟練した職人の手でしか仕立てられない特別なレザーです。表面を丁寧にスウェード調へと仕上げることで、深いマットブラックの質感が生まれ、光を受ける角度でわずかに艶を帯びる独特の陰影が現れます。まさに、使い込むほどにその表情を変えていく「育つ革」。HERMÈS が長年培ってきた素材哲学が息づいています。

シルエットは、Gジャン型をベースにダブルブレスト仕様を組み合わせたデザイン。カジュアルなワークジャケットのフォルムに、テーラードの構築性を重ねることで、日常に上質さと凛とした印象を与えます。フロントのボタンには「HERMÈS PARIS」の刻印が施され、細部にまでブランドの矜持を感じることができます。袖口のボタンや胸ポケットのフラップ、そしてダブル仕立ての重ね合わせ部分など、一つ一つが丁寧に設計され、実用性と美しさを両立しています。

内側には、ダイヤ状にキルティングステッチが走るライナーを備えています。このキルティングは軽量な中綿構造で、外見の重厚感に反して着心地は驚くほど柔らかく、保温性にも優れています。寒冷な季節でも快適に羽織ることができる実用性と、エルメス特有のしなやかさが共存するつくりです。タグには「PEAU DE PORC PIGSKIN」の表記が入り、“MADE IN FRANCE” の文字がその品質を静かに証明しています。

このモデルは、現行のエルメスではほとんど再現されていない仕様です。ピッグスキンという素材自体が、近年では希少性が高まり、特にここまで美しく加工されたスウェードピッグスキンは、もはや手に入れることが困難です。現行のラムスキンやカーフレザーが持つ滑らかさとは異なり、わずかな起毛と奥行きのある色味、空気を含んだ柔らかい質感が、ヴィンテージのエルメスならではの存在感を放ちます。

マルジェラ期のデザイン哲学とも共鳴するような、静謐な美しさがこのジャケットにはあります。控えめで、主張しすぎず、それでいて確かな存在感を放つ—...そんなバランス感覚は、まさに「脱ロゴ」「脱装飾」の時代を先取りしたエルメスの真骨頂です。肩の落ち方や、やや短めの着丈が生み出すコンパクトなバランスは、デニムやスラックスはもちろん、上質なウールパンツやカシミヤニットと合わせても自然に馴染みます。

また、ピッグスキンは非常に丈夫で、摩耗や経年変化にも強い素材です。日常的な着用に耐えるタフさを持ちながら、使い込むほどに表面の艶が深まり、唯一無二の風合いへと育っていきます。まさに「一生もの」という言葉がふさわしい一着です。キルティングライナーによる防寒性、柔らかな裏地の肌あたり、そして革の香りまで、手に取った瞬間に感じられる質感の豊かさは、現行のプロダクトにはない魅力といえるでしょう。

サイズは40表記。元々ウィメンズアイテムですが、男性でS〜M相当の体型に自然に馴染むサイズ感です。肩周りの構造が柔らかいため、インナーに薄手のニットを重ねてもシルエットを崩さずに着用できます。全体的にしっかりとした状態を保っており、使用感は全体的にスレやフェード感が程よくある一着。大きな穴やダメージもなく、レザーコンディションとして非常に良好です。

一点一点が手作業で作られるエルメスのレザージャケット。その中でも、このピッグスキン・ダブルジャケットは、素材、デザイン、仕立てのすべてにおいて特別な位置づけを持ちます。市場でも滅多に見かけない希少なモデルであり、今後さらに評価が高まっていくことが予想されます。この出会いが一期一会となることも少なくありません。現行のラグジュアリーラインには存在しない、この静かな迫力をぜひ手に取ってご体感ください。