WORK & MILITARY

1900's French Antique HBT Indigo linen Fireman Double breasted jacket

定価
¥250,000
定価
特価
¥250,000
Tax included
COLOR : INDIGO

SIZE ONE:着丈78cm 身幅51cm 肩幅43cm 袖丈59cm

MATERIAL : Indigo linen 100%

1900's French Antique HBT Indigo linen Fireman Double breasted jacket

1900年代初頭にフランスで消防士に支給されていたダブルブレストのジャケット。素材にはインディゴ染めのリネンをヘリンボーンツイル(HBT)で織り上げた特異な生地が採用され、当時のワークウェアやユニフォームのなかでも異彩を放つ存在です。現存数自体がきわめて少ない消防士ユニフォームのなかでも、ダブルブレスト仕様、そしてインディゴリネンHBT素材を併せ持つ一着は、コレクションピースとしても高い評価を得ています。

最大の特徴は、前身頃に配された二列10個のメタルボタン。シングル仕様が一般的な消防士ジャケットのなかで、ダブルブレストは極めて珍しい構造です。防火性や耐久性を高めると同時に、着用者に威厳を与えるデザインといえます。軍服や一部のワークジャケットにおいてもダブルブレストは見られますが、消防士のユニフォームに採用される例は限られており、その存在自体が希少なディテールとなっています。ボタンの配列は左右対称に整えられ、装飾性と実用性を兼ね備えた設計。職務に従事する者の誇りを示す、象徴的なデザインといえるでしょう。

さらに縁取りに施された赤いパイピングは、フランス消防士特有の装飾であり、単なる機能服にとどまらず職能を明確に示す要素でした。赤は火の象徴であると同時に、公共性と威信を示す色彩でもあり、消防士が社会の中で果たしていた役割の大きさを表しています。この細部の意匠は、ユニフォームが単なる作業着を超えた「社会的記号」であったことを物語っています。

素材には、インディゴ染めのリネンHBTが用いられています。ヘリンボーンツイル(杉綾織り)は、そのジグザグの織り構造によって摩耗への耐久性を高め、当時フランスでは軍服や作業着の標準的な生地として知られていました。しかし、リネン素材で織られたHBTは現存数が非常に少なく、さらに藍染が施された個体となると一層稀少性が高まります。コットンよりも高い強度と通気性を備えるリネンは、炎や水、煤に晒される消防士の環境に適しており、同時に経年変化によってインディゴの色調が独自の深みを持つようになります。年月を経ることで青は柔らかく退色し、コットンデニムとは異なるマットでしなやかな表情を生み出します。これは素材学的にも文化史的にも極めて貴重な特徴であり、当時の服飾技術の高さを示しています。

袖口のカッティングや赤いトリミングの仕立ての丁寧さも注目すべき点です。作業服でありながらも美意識を宿した造形は、フランス的なユニフォーム文化の特徴を端的に示しています。消防士の制服は軍人や鉄道員の制服と並び、職務的機能を果たすと同時に、着用者の地位や社会的役割を象徴するものでした。そのため、機能性の追求に加えて、視覚的な完成度も求められたのです。

サイズの観点からも、このジャケットは特筆に値します。現存する同時代の消防士ジャケットは、当時の平均的な体格を反映して小さめのサイズが多く、日本人でもSサイズ相当のものがほとんどです。その中にあって、本個体は日本人のMサイズからLサイズに相当する大きさを持ち、現代において実際に着用可能なサイズで見つかることは極めて稀です。単に資料的な価値にとどまらず、実際に身に纏うことができるアンティークとしても非常に希少な存在となっています。

また、シングル仕様が主流のなかで、ダブル仕様は少数派であり、現代に伝わる数はごく限られています。つまり、単に100年以上前の服飾品であるというだけではなく、仕様・サイズ・素材のすべてにおいて希少性が重なった、稀に見る逸品といえるのです。

総じて、この「1900’s French Antique HBT Indigo Linen Fireman Double Breasted Jacket」は、フランス消防士ユニフォームの歴史を物語ると同時に、服飾史・素材史・文化史の交差点に位置する存在です。インディゴリネンHBTの重厚でありながら柔らかな風合い、赤いパイピングの鮮烈な装飾性、ダブルブレストがもたらす威厳、そして稀少な大きめサイズ。これらすべてが揃った個体は、アンティーク市場においても極めて限られた数しか確認されていません。100年以上の時を経た現在でも、その存在感は決して色褪せることなく、むしろ年月を重ねたことで唯一無二の輝きを放っています。

実用のために作られたユニフォームでありながら、美意識と象徴性を宿すこの一着は、まさにフランスのユニフォーム文化が生んだ傑作であり、服飾史を語るうえで外すことのできない重要な資料であるといえるでしょう。