C.P.COMPANY

06AW C.P.COMPANY Tinto Terra Collared Jacket

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COLOR : BLACK

SIZE 46: 着丈66cm 肩幅43cm 身幅54cm 袖丈62cm

MATERIAL : 表地:COTTON70% NYLON30%
裏地:COTTON100%

06AW C.P.COMPANY Tinto Terra Collared Jacket

1971年、イタリア・ボローニャにてマッシモ・オスティ(Massimo Osti)によって設立された〈C.P. COMPANY〉は、ヨーロッパのファッション史における最重要ブランドのひとつです。創設当初は「Chester Perry」という名でスタートしましたが、商標権の問題からすぐに〈C.P. COMPANY〉へ改称。その後、ミリタリーやワークウェアをデザインソースに据えつつ、画期的な素材開発や染色技法を通じて「機能とデザインの融合」というテーマを追求しました。

特に有名なのは、1970年代末に開発された「ガーメントダイ(製品染め)」という手法。完成した製品を丸ごと染め上げることによって、深みのある発色と独特の風合いを生み出す技術は、今では業界全体に広がるほどの影響力を持ちました。さらに1980年代には、レンズを内蔵した「レンズ付きジャケット」を発表。これは後に〈C.P. COMPANY〉のアイコンである“ゴーグルジャケット”として知られ、モーターサイクリストやミリタリーパイロットの装備から着想を得た、究極の機能服として語り継がれています。

オスティが1990年代前半に第一線を退いた後も、そのDNAはブランドの根幹に息づいていました。2000年代半ば、アーティスティック・ディレクターを務めたアレッサンドロ・プニャセッリ(Alessandro Pungetti)らデザインチームは、「素材の再発見と再定義」をテーマに掲げます。天然素材をベースにしつつ、最新の加工技術を掛け合わせることで“オスティ的精神”を現代的に再解釈したのです。

この「06AW Tinto Terra Collared Jacket」は、そうした流れを象徴する一着です。名前の通り「Tinto Terra(ティント・テッラ)」と呼ばれる独自の製品染めが施されています。Tinto Terraは直訳すると「大地で染める」ですが、実際には泥染加工を意味し、天然の土壌や鉱物に含まれる成分を用いて染め上げる技術です。この工程によって生まれる色合いは均一ではなく、濃淡や陰影に満ちた独特のムラ感を帯びています。その結果、布地はミリタリーウェアが持つ“実用の痕跡”に近いリアルさを獲得し、同時に自然が持つ原初的な美しさも纏うのです。

素材は高密度に織られたコットンシェル。しっかりとした耐久性を備えつつ、泥染加工によって奥行きのあるオリーブトーンへと仕上げられています。光の角度によって、グレーがかったカーキからブラウンのニュアンスまで変化する表情は、天然染料ならではの味わい。さらに着込むごとにアタリやフェードが現れ、着用者それぞれの“生活の痕跡”を刻んでいきます。これは合成染料の均一な発色では決して得られない魅力です。

デザインは、フィールドジャケットをベースにした4ポケット仕様。胸部と腰部のフラップポケットは収納性と機能美を両立し、C.P. COMPANYらしいユーティリティを強調しています。肘にはオーバル型のエルボーパッチを配し、ワークウェア由来の耐久性を確保。襟にはコーデュロイを用いることで、クラシックなアウトドアやハンティングウェアの雰囲気を演出しています。これらのディテールは一見素朴ですが、実はブランドが常に大切にしてきた「伝統と革新の融合」を示す重要な要素です。

2006年秋冬という時代背景を踏まえると、このジャケットは「C.P. COMPANYが改めてオスティの原点を見つめ直していた時期」の象徴的なプロダクトです。90年代に都市型機能服として発展してきたブランドは、2000年代半ばに入ると自然素材や天然染色といった要素に再注目し、よりプリミティブで“生活に根ざした服”を目指す方向へ舵を切りました。Tinto Terraはその代表的な実験であり、人工的な均一性ではなく、自然がもたらす不均一さを積極的に纏わせる試みでした。

この思想は、ブランドの根底にある「服は消耗品ではなく、生活を支える道具である」という哲学にも通じています。道具である以上、使い込むほどに表情を変え、持ち主に馴染んでいくこと。それを最も美しい価値と捉える視点は、現代のファッション市場においても新鮮な説得力を放っています。

アーカイブとしての評価も極めて高い一着です。C.P. COMPANYはSTONE ISLANDに比べてアーカイブ市場の規模は小さいものの、近年ではその価値が急速に見直されています。特にこのTinto Terraシリーズは流通数が少なく、実際に現存する数も限られているため、コレクターズアイテムとしての希少性は群を抜きます。同時期のアイコンである“ゴーグルジャケット”と並び、ブランド史を語るうえで欠かせない存在と言えるでしょう。

―― 泥で染め、大地の色を纏う。06AW C.P. COMPANY Tinto Terra Collared Jacketは、自然と都市、伝統と革新を結びつけた稀有なアーカイブピースです。時間を重ねるごとに増す魅力は、単なるアウターを超え、“人生の伴走者”となる一着に他なりません。

大地の記憶を身にまとう、この一着をコレクションに加えることは、C.P. COMPANYという哲学を自らの生活に刻むことに等しいでしょう。