1950's Czechoslovakian Army Dubaky camouflage reversible pants "Dead stock"

1960's Czechoslovakian Army Dubaky camouflage reversible pants "Dead stock"

冷戦初期、社会主義体制下のチェコスロバキアが独自に生み出した名作迷彩“ドゥバキーカモフラージュ”。
その独創的なデザインと用途の特異性から、現在では「幻の迷彩」と称されるこのパターンを用いた、1950年代製チェコスロバキア軍実物パンツが、貴重なデッドストックコンディションにて入荷しました。

Dubakyとは、チェコ語で「オークの葉」や「森のキノコ」を意味する言葉に由来し、その名の通り、木々の葉や地衣類、森林の陰影を抽象的に描いたようなパターンが特徴です。色味は明るいカーキやベージュ、ライトグリーンを基調とし、ブラウンやダークグリーンの濃淡が重なって構成されています。自然の中に溶け込むことを目的としたこの有機的な迷彩は、まるでグラフィックアートのような芸術性を帯びており、軍用衣料でありながら美術的価値すら感じさせる稀有な存在です。

そして本パンツの裏面には、通称Mloky（ムラキー）カモ、または“クラウドカモ”と呼ばれる、もう一つの希少な迷彩パターンが配されています。こちらは、グレー、オリーブ、チャコールブラウンといった沈んだトーンを基調に、曇り空や霞のような斑模様を浮かび上がらせた構成で、森林の陰影や岩場、山間部といった暗所環境でのカモフラージュを想定したものと考えられています。柔らかなグラデーションとぼかしを効かせた抽象的なパターンは、ドゥバキーカモとは異なる静寂さと奥行きを持ち、視覚的ノイズを抑えながら高い隠蔽効果を実現しています。

この2つの迷彩が一つのパンツに両面仕様で施されているという点こそが、このアイテムの大きな魅力のひとつです。それぞれ全く異なる自然環境への適応を意識したパターンでありながら、どちらも有機的かつ高度に抽象化されており、チェコスロバキアという国の文化的感性の高さを感じさせます。

第二次大戦後の軍再編のなかで、空挺部隊や特殊任務の兵士たちに向けて限られた数が生産されたこのパターンは、西側でも東側でも見られないアート性を帯びたカモフラージュとして、近年改めて再評価が進んでいます。

本品は、そんなドゥバキーカモシリーズの中でも特に希少とされるボトムス。スモックやジャケットに比べ現存数が少なく、さらにデッドストックとなるとその数はごく僅か。軍用パンツという性質上、使用頻度が高くダメージやリペアが施された個体が多い中、本アイテムは一度も着用されることなく保管されてきた、まさに“眠っていた”逸品です。

デザイン面でも注目すべき点が多く、ゆったりとしたテーパードシルエットに、動きやすさを考慮した深めの股上、機能性の高いフラップポケットが前後に配置されています。ウエストはサイドにドローコードでの調整が可能なつくりになっており、当時の実戦を想定した機能的な設計思想が垣間見えます。

素材には耐久性に優れたコットンツイルを使用。しっかりとした厚みと張り感がありながらも、洗いをかけていくことで柔らかく馴染み、体に沿った表情に変化していきます。未洗い・未使用のデッドストックだからこそ、エイジングを自ら楽しめる点も、現代におけるヴィンテージウェアの醍醐味と言えるでしょう。

当時このパンツが着用されたのは、森林地帯や山岳地帯での偽装行動・奇襲任務を担う兵士たち。高い機動性とカモフラージュ性能を備えた戦闘服として設計された本品は、機能性とデザイン性を兼ね備え、まさに“着る装備”としての完成度を誇ります。

ファッションピースとして見ても、今の空気に驚くほどフィットします。無骨さのなかに繊細さが共存する　ドゥバキーカモのグラフィックは、シンプルなTシャツやシャツと合わせるだけでも独特の存在感を放ち、コーディネート全体の軸として機能します。また、カモ柄のパンツとしては珍しく、グリーンやブラウン一辺倒ではない柔らかな配色のため、ミリタリーアイテムにありがちな「野暮ったさ」とは一線を画し、洗練された印象さえ感じさせます。

さらにこのパンツは、単なるミリタリーウェアではなく、1950年代の政治・文化・軍事が交差する“時代の証言者”でもあります。チェコスロバキアというもはや存在しない国家が、限られた時間の中で生み出したミリタリーデザインのひとつの完成形。それが、未使用の状態で今も手に取れるという事実は、まさに一期一会です。

東欧の歴史が織り込まれた希少なヴィンテージピース。機能美と意匠性が融合したドゥバキーカモパンツを、今だからこそ、自分のスタイルの一部として取り入れてみてはいかがでしょうか。